Liber Usualis

グレゴリオ聖歌のテキストとして主なものに、ミサ用聖歌集のGraduale Romanum(ローマ昇階唱集)と、聖務日課(教会の祈り)用聖歌集のAntiphonale Romanum(ローマ交唱集)があります。勿論、現行版のGradualeは出版されていますし、Graduale Simplex(ミサ用簡易聖歌集《勝手に名付けた》)と言う聖歌集もあります。この聖歌集は従来のGradualeに収められ歌い続けられて来た聖歌の代りに、現行版の朗読集Lectionariumを基に、Gradualeよりもっと平易で簡略された聖歌を収めた聖歌集です。新たに編纂された聖歌日本の「典礼聖歌」は、この簡易聖歌集に非常に似ているので、これを参考にしたのかも知れません(誰か教えて下さい)。

このように、新しいミサ用の聖歌集は発行されていますが、新しい聖務日課用聖歌集Antiphonaleは、残念ながら未だ準備中らしいです。しかし、聖務日課で歌うHymnus(賛歌)を収めた聖歌集はLiber Hymnarius「賛歌集(これも勝手に名付けた)」として発行されています。

しかし、日本語の「教会の祈り(Liturgia Horarum)」には、何故かこの賛歌が記載されていません。教会が保ち続けてきた美しい賛歌を抜かし続けているのは、如何なる理由なのでしょうか?日本語版発行から二十年近くの月日が過ぎましたが、残念ながら賛歌を付け加えた「改訂版」や、「別冊賛歌集」等の発行の兆しは見えず、噂も聞こえて来ません。まさか、「日本の事情に合わない」とか、「規範版に合わせる必要など無い、日本独自の典礼を創るのだから」等と、いう理由が原因ではないと思いますが…。

聖務の中核を為しているのは確かに詩篇朗唱ですが、賛歌の占める位置をズバリ表している文章が、教会の祈りの総則173項に記述されています。

「賛歌は非常に古い伝統によって早くから「教会の祈り」のうちにその位置を得ていたが、このことは今日も変わりがない。実際、賛歌はその抒情的性質によって特に神の賛美に向けられているだけでなく、会衆向きの部分であり、さらにほとんどの場合それぞれの時課あるいは個々の祝日の特性を、「教会の祈り」の他の部分よりも直接的に、また素直にあらわし、また敬虔に聖務を唱えるよう心を動かし引きつける。賛歌の文学的美しさは、しばしばその効果を高める。そのうえ賛歌は「教会の祈り」の中では教会の創作になる主要な詩的要素のようなものである」

国語の試作は云々とか、アーだ・コーだと色々と事情を探し出して、言い逃れ続けるのは如何なもんでしょうか?試作云々以前に先ず「翻訳した」のでしょうかね?何でも、ある宣教師が「典礼の国語化への手助けに」と言って、自ら翻訳した賛歌を典礼委員会か何かに差出したのですが、思いっきり無視されたそうです、どうなっているのでしょうか?

話が思いっきり飛んでしまいましたが、昔も今も、ミサ用や聖務日課用のそれぞれの聖歌集があるのですが、グレゴリオ聖歌が片隅に追いやられた様な(カトリック教会で首位を占めるべき聖歌であると宣言されているにもかかわらず)今日よりも、もっと必要とされていた時代には、Liber Usualisと言う聖歌集がありました。Desclee(私はデクレと読むのですが?)出版社から発行されていて、前述のGradualeAntiphonaleの主要な聖歌はもとより、ミサ典礼書や聖務日課書から主な祝祭日の典礼文が収められていて「グレゴリオ聖歌を含む主日及び主要祝祭日用定式書」ってな感じの非常に便利な聖歌集だったのではないかと思われます。以前の典礼は(と言っても実際にその時代に生きていた訳ではありませんが)今の様に三年周期でミサの朗読や聖務日課の交唱が変わる事は無かったので、その様な聖歌集が存在出来たのだと思います。まして、Liber Usualisでさえ電話帳位の厚さ(2000ページもある!)がありますから、今その様な「主日祝祭日定式書兼聖歌集」を作ろうとしたら、トンデモナイ代物が出来てしまう事でしょう。(あったとしたら、それはそれで面白いと思いますが。)

ところで、そのLiber Usualisですが、これからグレゴリオ聖歌の世界にドップリ浸かりたいとお考えの方には超オススメの聖歌集です。前述の様にGradualeAntiphonaleの主要な聖歌が収められているからです。現在の典礼暦と些か表記が違っていたり、現行の聖歌集と聖歌の配置が違ったり、朗読箇所が変更されたりしていたりしますが、一冊で二冊分、否、聖体降福式用の聖歌等を含めると三冊分以上の聖歌が含まれていて、非常に便利だと思うのです。でもこのLiber Usualis、探すと結構苦労するかも知れません。何しろ三十数年前に廃版になっているからです。欲しいと思われた御方、申し訳ございません。<(_ _)>

しかしご安心を。何とアメリカで復刻版が発行されているのです。( ̄ー  ̄)

(おそらく、気ままな自分勝手の不従順が横行して、典礼の退廃乃至荒廃を生み出す動きに対して、典礼を荘厳で美しい祈りに戻そうとしようとする動き(勿論第二バチカン公会議以前に戻るという運動ではありません)が欧米にはあって、その影響で再版に踏み切ったのではないかと勝手に推測しております。)

ヨレヨレになって扱いに気を使ったり、意味不明の書き込みがあったりする(それがまた良かったりするのですが…)古本ではなくて、新品が入手出来るのです。グレゴリアン・フリークにとっては朗報です!。

この復刻版は業界用語(そんなのあるのかな〜?)で「No.801」と言う、序章やルブリカ(典礼注規…典礼の挙行・執行時に、守るべき事項や注意すべき事柄を記したもの。黒色で記された典礼文に対し、赤色[ラテン語でRuber]で記されている事からルブリカと呼ばれる。)が英語で、譜面が四角いネウマ譜で記された「The Liber Usualis」です。

因みに、同様にルブリカがフランス語で記されているモノを「No.800 "Paroissien Romain"」、全てラテン語で記されたモノを「No.780 "Liber Usualis"」と言います。しかも驚くべき事に、譜面が五線で記載されたヴァージョンも当時ありまして、「No. 801-C 」「No. 800-C 」「No. 780-C」という様にそれぞれの出版番号の後に「-C」が付けられています。

やたら引用が多くなってしまいましたが、「欲しい」と思ってしまったお方は、このホームページ内にあるリンクのページに、版元へのリンクがありますのでご検討下さい。(当方では代行輸入等は致しませんのであしからず。)

もしかして、買っちゃう方がいるかもしれませんので(いるわけ無いか…)、非常に簡単で、無責任極まりない説明を致したいと思います。

信憑性の限りなく低い無責任極まりないウンチクへGo!

そんなアホくさい事には付き合いきれん、いいや、もうやめておく!

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