敬神徳 についての 特別糺明

第一糺明

第一要点

 単なる被造物の捧げまつる敬神の思いを悉く汲み盡し給い、而も御子によらずしては完全に尊まれ給い得ぬ広大にして無限なる天主を礼拝し奉る。

 尊き御子イエズスはその類いなき敬神徳より溢れ出ずる崇拝を余すところなく御父に捧げ給うのみならず、更に総ての信者の霊魂の中に、御自らの敬神徳を注ぎこもうと為し給うのです。私達は聖主イエズスを讃美し奉り、喜びをもって主の御計画にあずかり、その御慈愛深き御願望に感謝して答え奉りましょう。

第二要点

 敬神徳とは天主様及び聖なる事物に対し、捧ぐべき礼拝と尊崇とを内的外的を問わず捧げまつる徳であります。この徳により要求される義務を私達がよく果たしたかどうかを糺明しましょう。

 私達は天主の無限の卓越性の故に最も優れた敬愛を盡し、その人知の及ばぬ偉大さの故にいとも深い尊敬を拂い、一切の被造物に対するその最高の支配の故に全き服従を以て天主様を讃美し奉りましたか。

 私達は内的にかかる心情と心構えとを抱くに甘んじ、外的に何らかの証しを為そうと努めず、少しも信仰の外的表白を示そうとしなかった事はありませんか。

 私達はとりわけ、この徳の主要なる行為である礼拝と犠牲と祈りとを行い、天主様は一切の善の根源で在られ、一切の尊崇は悉く天主様に捧げるべきで、一切はその尊い御前に消え去り、天主様のみ御一人「有」の名に値する御者に在すことを熟考したでしょうか。「我は自ら有る者なり」(出エジプト記3−14)と天主様はモイゼに仰せられていらっしゃいます。

 私達は天主様の御前に出でる時、いとも高き御霊威に対して相応しい尊敬を抱いたでしょうか。

 ミサ聖祭中、祈りの間、聖堂内等において、私達は敬神の精神を抱く司祭、修道者達に天主様の現存与える尊敬と敬虔とを表したでしょうか。

 又この精神に鼓吹され、私達は聖主が御父の家の為にいとも明らかに御示しになられた御熱意を体得していますか。そしてこの熱意を以て、聖堂を訪れ、祭壇に尊敬をはらい、天主様の聖性と此処で行われる秘蹟の偉大さに相応しくないことが無い様にしたでしょうか。

 私達は聖遺物、聖器、諸聖人の画像、又何か特に祝別され世俗のものと区別されたもの一切に対し、尊敬の心を抱いたでしょうか。

 最後に、私達は何らかの敬神的理由により、自分自身の行動を向上させ、総てこれを天主様に捧げ、その偉大さと至高さとを讃え奉りましたか。

第三要点

 主よ、御身の偉大さに対して相応しいものは限りない讃美です。然し讃美を御身に捧げ奉るのに必要なのは敬神徳です。主よ、これを有し給う御者は御身の全き礼拝者であられるイエズス様御一人でございます。故に、イエズス様により、イエズス様と共に、又イエズス様に於いてのみ、私達は御身に相応しい栄誉と光栄とを捧げ得る事を思し召し、願わくは、私達をして断じてイエズス様より離れる事が無い様にしてください。イエズス・キリストによってのみ私達は天主様に近づき得るからです。「我によらずしては、父に至る者はあらず」(ヨハネ14−6)と救世主は御自ら仰せられましたから。

第二糺明   聖母マリアに対する信心

第一要点

 人類の贖い主に相応しき御母として、いとも聖き童貞マリアを選び給うた天主を礼拝し奉る。天主が聖母を諸々の天使の上にあげ給い、御自身の傍らに聖母の御座をしつらえ、被造物にて能う限り、聖母を天主の讃美にあずからせ給うたことを感謝し奉る。

 「至聖なる三位を崇めまつる被造物は、皆至聖なる童貞マリアを尊敬する。」と聖ベルナルディノは言っています。この拝すべき聖三位の御前に謙り、童貞者の光栄ある元后に対して誠心からの信心を抱かせてくださる様に願い奉りましょう。

第二要点

 総ての信者は至聖なる童貞マリアに熱い信心を抱くべきで、特に混沌とした現代に生きる私達にはその義務がある事を私達が良く了解しているかどうかを吟味いたしましょう。

 天主様は聖母を私達に母として与え給いつゝ、私達が聖母に敬愛を尽くす事を命じられ、聖母を諸天使と人類との元后と成し給いつゝ、聖母に仕える事を私達の義務とされ、御自ら無数の類い無き聖寵を以て聖母を高め給いつゝ、私達が他の諸聖人を敬うにも勝り、全く特別の尊敬を聖母に捧げる事を求められました。これらの事に対して私達は特別な信心を持っていますか。

 天主の御母たるその資格と、その優れて高い聖性と、私達が聖母から受ける御助けと、聖母がキリスト教徒に賜う愛と、とりわけ聖母に仕える目的を持て己が身を捧げている人々に賜る愛等は、何れも私達に特別に聖マリアを信心させる理由である事を私達は熟考しましたか。

 聖ベルナルドに依る、総ての聖寵は聖母を通じて私達に与えられるとこう事を確信していますか。「神は総ての賜物がマリアにより私達に与えられる事を望まれた。」とこの師父は語っています。そしてこの考えに基づき私達は信頼を持って聖母に依り頼みましたか。総ての困窮に際して、最も慈悲深き御母、最も有力なる保護者、最も同情深き代祷者として聖母に祈りましたか。

 又、聖母の御慈悲に対し、信頼を欠いた事はありませんか。己が罪の故に聖母の御恵みに値しない者と成ったのではないかと恐れつゝ聖母に依り頼み、天主の正義に対し聖母が最も確かな避難所となり給う事に注意しなかった事はありませんか。

 そして、聖母に対して常に変わらぬ信心を抱きましたか。聖母に尊敬を捧げずには一日も過ごさぬ様に努め、とりわけ聖母の諸徳に思いを馳せ、その御心に適う様に励みましたか。

 最後に、私達は子供が極めて善良な母親を敬う為に用いる総ての方法を以て、最善を尽くし、至聖なる童貞マリアに崇敬を表しましたか。又、他の人々に、特に私達に委ねられた方々に、聖母に対する限りない献身の念と限りない信頼とを抱かせるように努めましたか。

第三要点

 主よ、私達は御身より母として聖マリアを賜りました。ですから私達は当然の事として、母に対して子供が抱く真の愛情を、聖母マリア様に対して抱かなければ成らない事を知っています。願わくは私達の霊魂に、この優しき御母に対して抱く子としての心を持たせて下さい。如何なる困窮に際しても、信頼を以てその御許に馳せ寄り、苦しみの時には常にその御慈悲にすがり、無力な時にはその御能力に助けを乞い、その御保護の下に倖にも救霊の港に着き、永遠に聖母からの御恵みを感謝出来ます様に。

 

第三糺明   守護の天使に対する信心

第一要点

 その子供等から片時も御眼を離さず、絶えずその一切の必要に備え給わんと思召し給う善き父親の如き天主を礼拝し奉る。

 私達の弱さと敵の数とを御知りになっている天主様は、各自に一位の天使を賜われて、彼に私達の行動を注視し、私達の防御を命じられました。「主はその御使達に命じて、汝等が歩む諸々の道に汝等を守らしむ、即ち汝等の足石に躓ざるよう御使達汝等を携え導かん。」(詩篇90−11,12)と、予言者は述べています。

 この頼もしき御助けを天主様に感謝し奉り、この御言葉をもって言い尽くす事の出来ない御慈愛に対して、感謝の思いを表しましょう。そして私達が守護の天使に対して如何なる信心を抱いたかを吟味致しましょう。

第二要点

 私達は守護の天使が常に私達と共に現存し、常に万事を誠心を以て私達の世話をしようと配慮して下さる事を度々考えましたでしょうか。又この恩に基づき、私達は絶えずこの尊い証人に相応しい敬いと謙遜とを以て振る舞ったでしょうか。

 私達は自分の守護の天使が愛情によっても、その義務の上からも私達を守り給う事を考え、又、私達を信仰と徳とに進ませることは、天主様に光栄を帰し、己が霊魂を益する方法なるが故に、これこそ守護の天使の最大の望みであると考え、大いなる信頼を抱いたでしょうか。

 妨げ、苦しみ、困難、嫌悪及び誘惑等に際し、私達は己が完徳に反する種々の妨害に打ち勝つ為に、守護の天使の助力が得られることを確信し、先ず救援を求めたでしょうか。

 聖人達に対する最も良い信心は、彼達が特に秀でた徳を修得したことによるでありますから、私達は天使達が忠実に悪魔と戦い、聖寵に応え、天主様の御旨を行いつゝあることを学ぶ様に努力しましたか。一言して、聖なる天使達に倣い、全く潔い、全く聖にして、全く神的な生活を送る様に努力を傾けたでしょうか。

 (特に教師たる方々に対して)授業中、或いは監督の間、私達は時々子供達の守護の天使に祈り、私達の教えている学課を彼達に理解せしめ給うよう願ったでしょうか。又、生徒達の無垢を特に守り、昼間は勿論、夜は特別に、悪魔の奸計と本性の悪への傾向より彼達を守護し給うように懇願したでしょうか。

 最後に私達は、聖なる天使達に対する信心により、一日として欠かすこと無く彼達に尊敬を尽くし、私達の居住する地の守護の天使、及び私達が何らかの関わりのある人々の守護の天使に依頼み、更にこのことこそ聖旨に従ってなし、天主様に光栄を帰し奉る優れた方法であるとの堅き信頼をもち、この聖なる習慣を実行したでしょうか。

第三要点

 主よ、私は塵、埃に過ぎぬ者ですが、御身は私に御使等の一位を賜い、私を導かせ、私と共に居らせ、私を守護せしめ、御身によりて予定されている最も幸いである目的地に連れて行かせて下さいます。あゝ、いと高き御慈しみよ、身に余るこの御恩恵に対して何を以て報いたらよろしいのですか。私は御身の聖寵の助力により、御身の御憐れみを高らかに伝え、従来に優り、私の守護の天使の与えて下さる良き考えに注意を傾け様と思います。与えられる示しに心を向け、聖ベルナルドに倣い『守護の天使の現存に大いなる尊敬を抱き、その御保護に全き信頼を寄せ、その慈愛を感謝する為、他にも増して信心を捧げます』。

中央出版社刊 特別糾明より抜粋

 

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